久しぶりに書庫の手前から高橋和巳「孤立無援の思想」を取り出して読んでみる。いつ見ても名文だ。39歳で夭折した高橋のこの小論は31歳に書いている。改めてその天才性を実感する。社会の守旧派からは孤立無援の立場を固執した高橋は、改革を求める実に多くの若い読者に支持れた作家でもある。その文体は孤立しても美しい。
「一切が情勢論的に動いているようにみえる政治にも、時としてほとんど文学的な、各自が貯えていた情熱の性質や、変わることなき態度によって事態が決せられる時機があるのである。視野はいったん極限的にせばめられ、情勢判断をなそうにも情報機関そのものが崩壊する。たよれるものはただ自らの意志と、内に秘めた各自の絶対志向、そしてそれを根幹とした状況を超える構想力だけであることに気づく瞬間が確かにある」(高橋和巳「孤立無援の思想」p69-70)

